妊娠したいと切望している貴女へ

田村秀子婦人科 院長 田村秀子

「どうして私だけがこんな苦労をしなくちゃならないの!」こんな思いに囚われた事はないでしょうか。友人の妊娠報告を聞いた後、暫く回りの音も聞こえず頭の中でいろいろな思いや情景がフラッシュバックして、気がつけば随分と時間が経っていた、という経験はないでしょうか。生理が来るたびトイレで天井を仰いでため息をついてはいませんか。

不妊症治療に携わる医者は異口同音に「妊娠する性格がある」といいます。それはプラス思考のできる人です。我が身に降りかかるストレスを自分に都合のよいように意義付けして消化吸収していくのです。勿論何十年もかかって培ってきた性格が変わるわけはありません。でも物事を見つめるスタンスをほんの少し変えることはできるはずです。「忘れた頃に妊娠する」とよく言われますが、これは真実です。忘れた頃というのはすなわちストレスがなくなる・プレッシャーがなくなることです。そうすれば脳内ホルモンやステロイドホルモンなどのバランスがとれ質の良い卵子が出てくるし、卵管の緊張も取れます。現実には忘れることなんてできっこないのですから、ストレスを軽減しプレッシャーを跳ね除ける努力をすればよいわけです。不妊症治療中はあせって当然です。でも漫然とあせる自分と共存してはなりません。もう38歳と思うより”まだ”38歳と思う方が気が楽です。適切な治療を受けるなら40歳も決して怖くはありません。不用意に発せられる「お子さん未だ?」という言葉を聞いても、お姑さんがもらってきた子作りのお守りを見ても、一瞬は落ち込んだらいいのです。でも次の瞬間「おっと負けてちゃいけない。私はちゃんと治療を受けてるんだ。私の今できる努力を十分にしてるんだから」と自信を持ちましょう。そしてにっこり微笑んで「ええそうなんです。夫婦仲が良過ぎるから神様がヤキモチ焼いてるんでしょうか」と言い、娘のように心配してくれている(と思い込むのがコツ)お姑さんに感謝して「ありがとうございます」と言いましょう。要は気持ちにゆとりがあれば質の良い卵子が排卵し得るのです。

不妊治療のうち医者が患者さんに与え得るのは医療と心理療法と哲学です。何で妊娠しないのか理由を考えるのは医者の仕事です。だからなかなか妊娠しないのは医者が悪いと思えばよいのです。妊娠するためには何をしたらよいかなど考える必要はありません。如何に自分に無理をせず自然体で「お気楽不妊治療期間」をすごせるか、そのためのマインドコントロールだけが患者さんの仕事なのです。長い人生の中でほんの数年与えられた試練の日々、おそらくは良い母になるための鍛錬であろうと意義付けて、私たちとともに戦い抜きましょう。


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