不妊治療にとって好ましくないものはたくさんありますが、ストレスもその一つです。なぜなら、女性の生理周期というものは、脳の視床下部や下垂体から分泌されるホルモンによって、卵胞(卵子の入った袋)の発育が促されますが、ストレスによりこれらのホルモンの分泌が不十分であったり、バランスを崩すことがあるからです。
普段は何かとお忙しくストレスの多い皆さんにとって、ときにはゆったりと過ごす時間もとても大事ですね。
<本日の質問>
人工授精について教えてください
<回答>
人工授精(AIH) は、より運動性のよい精子を集め、子宮の中に直接いれて、卵子と精子が出会う確立を高める治療法です。
AIHは、“人工”という言葉から、自然な妊娠とはかけ離れたものという印象を抱きがちです。
普通の性交では精子は自力で子宮頚管を通過し、子宮の中から卵管の先まで到達しますが、0.001%程度とほんの一部にすぎません。
AIHでは、精液の中から不純物を取り除き、より運動性の高い精子のみを子宮内に注入するので、通常の性交よりはずっと多くの精子が卵管にいき、卵子に出会うことができます。下の絵のように、卵管通過→受精→着床→妊娠というプロセスは、通常の性交後の妊娠と同じなのです。
したがって人工授精が、決して”人工的“ではないことがおわかりになると思います。
【人工授精の適応は?】
①性交後試験(ヒューナーテスト)が不良
②精子の数が少ない、運動率が低いなどの精液検査に異常がある
③性交がうまくいかない(インポテンツなど)
④タイミングでなかなか妊娠しなかった
⑤卵管の周囲の癒着や子宮内膜症などの明らかな不妊原因がある
上に示しましたが、決して絶対的なものではありません。最終的にはご夫婦のご意見を大事に、納得のいく治療をうけてくださいね。
【人工授精までの手順】
主な流れは次の図のようになります。
外来で、超音波検査や基礎体温から排卵日を予測し、人工授精の予約を行います。
当日は、精液検査と同じように容器に精液を取っていただき、当院に持参していただき、1階の受付で提出してください。
精液から不純物を取り除き、運動性のよい精子のみを回収し、子宮内に入れます。麻酔などは不要です。
子宮の入り口を触った刺激により少量の出血がある場合がありますが、心配ありません。ただし、高熱や腹痛がある場合にはご連絡をお願いします。