第五回のりこ通信は「精子について」のお話です。
言葉は知っていても詳細は分かっていない人も多いのではないでしょうか?
<本日の質問>
精子について教えてください。
<回答>
皆さんご存知の通り、妊娠するには、まず女性側は“卵子(らんし)”、男性側は“精子(せいし)”と呼ばれる、それぞれの遺伝情報をもった二つの細胞が必要です。
精子と卵子が出会い、結合(=“受精(じゅせい)”)し、女性と男性の遺伝情報を併せ持った卵=受精卵(じゅせいらん)が発育し子宮内に宿る(=“着床(ちゃくしょう)”)ことが必要です。この“卵”が、将来生まれてくる赤ちゃんの一番初めの出発点なのです。
皆さんは精子についてどのようなイメージをお持ちですか?
図1のように、精子は主に頭としっぽの部分からなっています。本当に“おたまじゃくし”のようですね。
精子の全長は約0.06mm程、頭部はその1/15程度、ほとんどは尻尾のように長い鞭毛部(主部と終片部の部分)で占められています(図1)。卵子の直径は0.1mmくらいありますので、精子の頭部はかなり小さいですね。
しかし、この頭部には遺伝情報が凝縮した状態ですべて詰められており、大変重要なのです。また頭部表面は、受精のために卵子へ接着・侵入するのに不可欠な、“先体(せんたい)”と呼ばれる部分に覆われています。鞭毛部は、精子の前進運動の役割を担っています。
精子は男性の精巣(せいそう)の精細管で72日間かけて作られます。精巣でつくられた精子は、精巣上体を約2~12日かけて通過し、精管へと運ばれます(図2)。
精巣内の精細管でつくられた精子はまだ運動することができません。精子は、精巣上体や精管を通過している間に成熟し、運動する能力を獲得します。
卵子と精子の大きな違いは、卵子は生まれる前につくられてからは新たにつくられないのに対し、精子は次々に新しくつくられていくことです。 卵巣にある卵子は年齢とともにどんどん減っていき、最終的には閉経期には排卵も卵子自体もなくなりますが、精子は年齢とともにその産生能力は多少衰えるものの、精巣では新たに精子をつくり続けています。
精管を通過し運動能を獲得した精子は、その後精嚢や前立腺などからの液体成分と合わさり、最終的に尿道から精液として射精されます(図2)。
平均2.5~3.5mlの精液の中には、1mlあたり平均1億個の精子を含んでいます。
射精後に体外に出された精子は、女性の生殖器官内(子宮や卵管内など)で一定時間存在することにより、卵子と受精する能力(卵子に侵入するだけの勢いのある運動性と、頭部を覆っている先体の変化)を獲得し、ようやく卵子の透明帯に接着・通過し、卵子内に侵入し、受精することができます(写真)。
今回は男性側である精子の構造や精子形成から受精までの大まかな流れについて簡単にお話しました。妊娠はご夫婦のどちらが欠けても成立しません。お互いの体についての理解をより深めていただけたらと思います。