“生理前って、なんでこんなに眠くなって、だるいのでしょうか?”
“寝ても、寝ても、まだ眠い。”
皆さん、こんなこと思うことは今までありませんか?
どうして、女性には生理前にこんなことがおこるのでしょうか?
生理2週間前くらいから、体や心理的にも様々ないやな症状がおこることを、月経前症候群(premenstrual syndrome 略してPMS)と呼びます。
たとえばお腹が痛かったり、張ったり、お肌があれたり、ニキビが出やすかったり、イライラして怒りっぽかったり。そして、眠かったり、眠れなかったり。本当にいろいろな症状がでますよね。
今回はPMSの中で、“睡眠”についての話題です。
生理前に眠れなくなる状態を“月経前不眠症”、日中強い眠気に悩まされることを“月経関連過眠症(月経前過眠症)”といいます。
閉経の前後に、眠れなくなる“閉経時不眠症”も、月経に関連しておこる睡眠障害の一つです。
ある調査では、月経に関連して41%の女性で睡眠に変化があり、1%が月経前不眠症、43%は月経前過眠症、5%は月経時不眠症であったと報告されています。
生理の周期は、“卵胞期”と“黄体期”の二つに分けられます。
“卵胞期”は生理が始まってから排卵までの期間、排卵から次の生理までの期間は
“黄体期”と呼ばれています。
生理周期に関連する主な女性ホルモンは、エストロゲン(卵胞ホルモン)とプロゲステロン(黄体ホルモンともいいます)。
生理前、すなわち高温期には排卵後の卵巣の黄体からは両方とも分泌されますが、特にプロゲステロンの血中濃度が高くなります。
プロゲステロンは、皆さんも基礎体温でご存じのとおり、体温を上げる作用があります。したがって、卵胞期に比べて、黄体期の最低体温と最高体温の差は小さくなります。私たちは、体温が覚めると眠くなり、体温が上がると目が覚めます。黄体期は1日の内での体温の変化が小さくなるので、睡眠と覚醒のメリハリも小さくなって、日中に眠気が強くなると考えられています。
プロゲステロンには、催眠効果もあります。プロゲステロンが分解されてできた“アロプレグナノロン”は、ガンマアミノ酪酸(GABA)の受容体に結合して、GABAという神経伝達物質を活性化し、睡眠導入作用、すなわち眠気をもたらすと考えられます。
典型的な月経関連過眠症では、月経の約1週間前から日中の眠気が強くなり、月経の開始とともに眠気が軽くなるパターンを取ります。このような過眠のパターンを取り、強い眠気が2日以上続き、このようなエピソードが年に1回以上あると、月経関連過眠症と診断されます。
これらの治療としては、基本的には生活指導とカウンセリングが行われます。
生活指導としては、睡眠の質を高めるための生活習慣が勧められます。
たとえば、日中に日光をしっかり浴びたり、昼夜の生活にメリハリをつけたりしましょう。気分転換を行うことも大切です。
基礎体温に日記のように記録してみて、月経周期と過眠症状の関連をみてみるのもよいと思います。ひどい眠気も生理が始まると軽くなることを知れば、気持ちが楽になり対処の仕方も見つかるかもしれませんし。
それでも過眠がひどくて日常生活に支障がある場合は、薬で治療をすることもあります。
治療薬としては、経口避妊薬(ピル)があります。ピルは排卵を止めるので、ホルモンの変化が少なく、生理があるときのような強い眠気は少なくなると思います。どうしても辛い場合は、是非一度相談してみてくださいね。
生理前の強い眠気に悩まされている方、生理前のこの憂鬱な時期を、お出かけやウォーキングなどで気分転換を積極的にしていけたらいいですね。